2022.02.15 防災
衛星電話は災害時に有効なのか?衛星電話の種類やそれぞれの特徴を解説
大規模災害時などの緊急時に有効な通信手段だといわれている衛星電話。この記事ではいくつかある衛星電話の種類とその特徴について紹介します。そのうえで本当に災害時に衛星電話が有効なのか解説していきます。
目次
衛星電話とは
衛星電話とは、地上にある衛星電話端末同士が宇宙にある衛星を介して通話を行う機器のことです。
一般的な携帯電話タイプや車載用、船舶用などさまざまなタイプが存在します。従来では音声通話のみが可能な衛星電話しかありませんでしたが、最近はメールなどが行えるようデータ通信が可能なモデルも登場しています。
衛星電話の特徴
衛星電話は他の通話機器と比べてどのような特徴があるのでしょうか。
ここでは衛星電話の特徴について解説します。
①広大な通信エリア
衛星電話は地上にある電話端末が衛星を利用して通話を行います。
宇宙にある衛星は広範囲に電波を送ることができるため、非常に広範囲をカバーすることが出来ます。
通常の固定電話や携帯電話では遠洋からの電話などが難しいですが、衛星電話であれば通話が行えます。
NTTドコモがサービスを提供している「ワイドスターⅡ」であれば、通信エリアは日本全土+沿岸部約200海里をカバーしています。
②災害に強いとされている
タイトルにもあるように、衛星電話は地上に通信インフラが少ないことから災害時に強い通信手段として定着しています。
静止衛星と非静止衛星
衛星電話にはいくつかの種類があり、それぞれの機器は「静止衛星」または「非静止衛星」を使うものに分類されます。
①静止衛星
静止衛星とは地球と同じスピードで地球の周りをまわっている衛星です。地上から静止衛星を見ると止まって見えるため静止衛星と呼ばれます。
静止衛星は地球の表面1/3を視野に収めることが出来るため、気象衛星や通信衛星によく利用され、ています。
②非静止衛星
非静止衛星はいくつかの衛星がさまざまな軌道で地球上を回っています。
そしてそれぞれの衛星は高度がそれぞれ違い、静止衛星に比べてかなり低い軌道にいる非静止衛星を利用することでクリアな音声通話ができるといったメリットがあります。
日本で使用できる衛星電話
現在日本で利用することが出来る衛星電話は主に4種類があり、それぞれが先ほど説明した「静止衛星」または「非静止衛星」を利用しています。
ここではその4種類について更に詳しく解説します。
インマルサット
ますはインマルサットを利用した衛星電話についてです。日本では日本デジコムやKDDIがこのタイプの衛星電話サービスを提供しています。
衛星電話同士の通話、衛星電話とスマホや固定電話との通話どちらも地上にある地上局を介して通話を行います。
衛星電話と聞くと、地上に通信インフラが全くないと勘違いされる方もいますが、一度地上局を介して通話を行う点をしっかり把握しておきましょう。
インマルサットはイリジウムに比べてデータ通信の速度が少し早いことや、電池の持ちが多少良いことが特徴として挙げられます。
しかし、衛星の軌道が高い高度であるため音声の品質は少し低下してしまいます。
ワイドスター
ワイドスターはNTTドコモが提供する衛星電話サービスで、N-STARという衛星を介して通話を行います。
N-STARは常に日本上空を飛んでいる静止衛星で、日本国内での通話向けサービスです。追加料金を支払えば海外との通話もできますが、基本的には国内通話での利用が現実的でしょう。
ワイドスターⅡでは音声通話に加えて、衛星を利用したFAXや映像伝送ができるようになりました。
またNTTドコモはワイドスターⅡの後継機の開発にも着手していることを発表しているため、今後の機能アップデートにも注目です。
スラーヤ
スラーヤを利用した衛星電話サービスは日本デジコムや、ソフトバンクが提供しています。
スラーヤは中東発の衛星で、アメリカを除く全世界と通話を行うことができるのが最大の特徴です。
このスラーヤ衛星ですが、実はインマルサット衛星を作ったメーカーと同じメーカーが手掛けており、機体はほぼ同じものが使われています。
そのため、衛星電話サービスについてもインマルサットと同じような機能になるケースが多く、各社のプランを確認して運用に合ったものを選択すると良いでしょう。
また日本国内の一部エリアで使用が禁止されているエリアがあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
イリジウム
イリジウム衛星を利用した衛星電話サービスはKDDIが提供しています。
これまで紹介した衛星はすべて静止衛星ですが、このイリジウムは様々な軌道で動く非静止衛星を利用して通話を行います。
インマルサットやワイドスターは3~4機程度の衛星を利用するのに対し、イリジウムは66機の衛星を利用します。そして実際に通話を行う際はこの66機の衛星のうち複数気が見える場所で通話を行う必要があります。
過去の事例から学ぶ衛星電話に潜む落とし穴
①安定した通話を行う条件をクリアできなかった
衛星電話は衛星を介して通話を行いますので、地上の衛星電話機と宇宙にある衛星が確実に通信を行える環境を整えなければなりません。
衛星電話は視界が開けた屋外、例えば丘の上や山間部、海上で非常に安定した通信を確保できます。
しかし、都心部の高層ビルの間や屋内、分厚い雨雲が空にあるような悪天候の日などは安定した通話が出来ない事例が多数報告されています。
大規模自然災害時に確実に衛星との通信が確保できる場所に移動して通話をすることは大きな負担になることは間違いありません。
衛星電話だけに頼った非常用通信網ではなく、衛星電話を補助するサブ回線を用意しておくことも重要だということがわかります。
②正しい操作ができなかった
みなさんは衛星電話で通話をしたことがありますか?ほとんどの方が操作をしたことがないどころか、実際の機器を見たことがないのではないでしょうか?
実際に過去に起きた大規模な自然災害のときに、備えていた衛星電話の操作が分からずに結局使えなかったという事態が起きています。
緊急時に使う機器は操作がとても簡単である、または平常時から頻繁に訓練などを行いいつでもスムーズに使えるという状態を作っておくことが重要です。
③順番待ち状態になった
衛星電話もつながりやすいとはいえ、通常の電話と同じように通話が混雑する場合があります。
その場合、通話の順番待ちが発生してしまう可能性が0ではないことも注意が必要です。
衛星電話のデメリットをカバーできるIP無線機
通信エリアが広く、インフラが物理的ダメージを受けにくいため災害に強いとされている衛星電話ですが、弱点があることもわかりました。
既に衛星電話を備えているかたはこのような弱点をカバーする方法を考えるべきでしょう。
またこれから衛星電話の導入を検討している方はほかの手段の検討も考える必要があるかもしれません。
そこで本記事では次世代の災害時通信網として注目されているIP無線機をご紹介します。
IP無線機の特徴
①IP無線機とは
IP無線機とは、パケット通信をつかって音声通話を行う無線機のことです。キャリアのインフラを使用するため、日本全国どこにいても通話ができ屋内や都市部でも問題なく利用できます。
②操作が簡単
IP無線機は他の無線機と同様、ボタンを押すだけで通話が開始できます。あらかじめ頻繁に行う通話相手を設定しておくことで、災害時にも簡単に使うことが出来ます。
③平常時から利用できる
IP無線機を活用できるのは緊急時だけではありません。イベントなどでも連絡手段として利用できるため、防災訓練以外でも端末に触れることができます。
④低コスト
IP無線機は衛星電話に比べて非常にコストが安く設定されています。そのため衛星電話からの入れ替えではなく衛星電話の補助として導入を検討することも可能です。
おすすめのIP無線機
モバイルクリエイトの防災用IP無線システムiMESHでは上記のように様々な種類のデバイスがあり、利用シーンに応じて最適な機器を選ぶことが出来ます。
過去の大規模自然災害でも活躍した事例があり、安心してご利用いただけます。また「災害時の通信手段はどちらがおすすめ?IP無線機と衛星電話を徹底解説」で詳しく比較していますのでぜひご覧ください。
衛星電話の仕組みを理解して最適な手段を選ぼう
本記事では衛星電話の災害時での有効性や注意点について説明しました。
衛星電話を備えている企業の危機管理、防災担当者の方は今一度自社の災害時通信網を見直してみましょう。
衛星電話の仕組みを理解し他の選択肢を知ることでより強固な災害時連絡網が構築できるようになるでしょう。