2021.10.12 防災
災害時の通信手段はどちらがおすすめ?IP無線機と衛星電話を徹底比較
災害時、ガス・電気・水といったライフラインの復旧と同じ位大切なのが、通信手段の確保です。通信手段がしっかりと確立していれば、安否の確認から救助物資の要請まで安定して行なうことができるでしょう。2011年に発生した東日本大震災では、衛星電話が活躍しました。そして今、それに変わる通信手段として注目されているのが、IP無線機です。ここでは、IP無線機と衛星電話の特徴やメリット・デメリットを紹介します。
目次
IP無線機と衛星電話の特徴を解説
はじめに、IP無線機と衛星電話、それぞれの特徴を解説します。どのような違いがあるのでしょうか。
衛星電話の特徴
衛星電話は、通信用人工衛星を直接経由として音声通話やデータ通信ができる電話の総称です。通信衛星が基地局となっているので、電波がキャッチできる場所であれば、全世界で通話ができます。震災で地上の基地局が倒壊しても、影響を受けません。また、地上に設置するアンテナ(地球局)は、手で持ち運べる「可搬型」と車に設置した「車載型」があり、通信環境を手早く整えることができます。
IP無線機の特徴
IP無線機は音声をパケットデータに変換し、携帯電話の回線を利用して送受信する無線サービスの総称です。個別通話はもちろんのこと、トランシーバーなどほかの無線機と同様に複数人と同時に通話ができます。
また、IP無線機は専用のアプリを利用することで、スマートフォンをIP無線機化することも可能です。スマホでIP無線アプリを使用した場合でも専用機とも通話が出来ます。このほか、機種によってはGPS機能も搭載されているので、無線機を持った人がどこにいるのかスムーズに把握することができます。
IP無線機と衛星電話のメリットデメリット
IP無線機と衛星電話には、それぞれメリット・デメリットがあります。ここでは、その一例を紹介しましょう。災害が起きたときに備え、IP無線機と衛星電話、どちらを利用すればいいか迷っている人は、参考にしてください。
衛星電話のメリット・デメリット
衛星電話のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | ・山間部や海上、海外でも問題なく使える ・災害により、基地局が破壊されても通信が可能 |
デメリット | ・屋内では通話が難しいことがある ・屋外でも天候状況によっては通話が難しくなる ・専用の端末機と地球局が必要 ・都市部のほうがつながりにくい ・サービスを提供している会社が少ない |
衛星電話は、屋外であればどこでも通信ができますが屋内では通信が制限されます。ですから、郊外では使いやすく都市部では使いにくい傾向があります。また、1台の端末で衛星電話と通常の携帯電話を使い分けることはできません。衛星電話は普通の携帯電話と同じように契約しているだけで基本料金がかかります。災害時に備えておきたい場合、維持費がかかるのもデメリットです。
IP無線機のメリット・デメリット
IP無線機のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | ・スマホを非常時にIP無線機とすることができる ・複数人で通話が可能。 ・電話を取らなくても音声が聞ける ・GPSを初めとする機能拡張が可能 ・サービスを提供している会社が多い ・免許がなくても使える |
デメリット | ・パケット通信の制限があるところでは使えない ・携帯電話の基地局がない場所では使えない |
IP無線は、携帯電話の通信網を利用しています。ですから、携帯電話の電波が入らないところでは使えません。また、パケット通信の制限が出ているときも使いにくくなる可能性があります。
しかし、都市部であれば地下街の中にまで携帯電話の電波が届いているので、屋内外関係なく使えるでしょう。
また、トランシーバーをはじめとする無線機がせいぜい数百メートルから数キロメートルの通信範囲などに対して、IP無線は日本どこでも通信することができます。
また、衛星電話に比べ通話を行う際の操作が簡単なので初めて使う人でもスムーズに活用することができるでしょう。また、想像を超える被害が出た場合にはスマホアプリを活用しネットワークを拡張することも可能です。
都市部の災害対策としてはIP無線機がオススメ
衛星電話が山間部や海上など携帯電話の電波が届かない場所で使用できるのに対し、IP無線機は都市部が被災した際の連絡手段として一歩優れています。
災害時の連絡ツールは使用するときに考えなければいけないことが少なければ少ないほどいいです。簡単な操作で日本全国どこにいてもクリアな音声通話が行えるIP無線機は災害時にお勧めの機器と言えるでしょう。
また、GPSを利用すれば無線機を持った人がどこにいるのかも把握できます。災害時だけでなくイベントのときでも役立つことでしょう。
まとめ
今回は、IP無線と衛星電話の特徴、メリット・デメリットを比較してみました。東日本大震災以降、「災害時には衛星電話が便利」というイメージが定着しましたが、都市部の災害にはIP無線機の方が便利です。災害時の連絡手段を確保するために衛星電話の導入を考えている方は、ぜひIP無線機も視野に入れてみてください。