2024.01.25 BCP対策

BCP策定とは?メリットや手順に沿った策定方法を簡単に解説

災害大国であるのに加えて、近年の新型コロナウイルス感染症の拡大や社会情勢の変化といった企業が緊急事態に直結する出来事に直面する機会も増加しています。企業が緊急事態でも事業の継続、または迅速な復旧を実現するために、BCP策定が注目されるようになりました。防災対策とともに企業が考えるべき、BCP策定の概要やメリット、手順に沿った策定方法を簡単に解説します。

BCP策定の概要や重要性を簡単に解説

BCP策定とは何かに加えて、注目される背景や重要性を解説します。

 

BCPとは

 

BCPとは”Business Continuity Plan”の略称で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。具体的には、以下のような緊急事態が発生した場合に事業の継続や迅速な復旧のために必要な方針や体制、手順、平時に行う行動を定めたものが、BCPにあたります。

・災害(地震、風水害、火災など)

・事故(セキュリティ事故、人為的な事故など)

・その他の有事(感染症の拡大、テロ攻撃、国家の緊急事態など)

 

BCP策定の重要性

 

BCPをあらかじめ策定しておくことで、緊急事態でも事業を継続または早期に復旧でき、企業としての被害や事業資産の損失を最小限に抑えられます。特に資金や企業基盤が潤滑ではない中小規模の企業では、事業が停止し操業率が落ちるとそのまま廃業に追い込まれる可能性も高いです。いつ起きるか分からない災害や事故、その他の有事に備えて、BCP策定が重要されています。

 

帝国データバングが実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023 年)」では、BCP 策定の意向があると回答した企業から多く挙がった想定リスクが「自然災害」が71.8%、「設備の故障」が41.6%、「感染症」が40.4%でした。近年発生した東日本大震災をはじめとした自然災害や、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、BCP策定を検討する企業も増加しています。

 

BCP策定のメリット

 

BCPを策定することで、企業の事業継続による廃業回避以外にも多くのメリットが得られます。具体的なBCP策定のメリットを解説します。
参考:https://kyoujinnka.smrj.go.jp/knowhow/merit/

 

緊急事態の事業復旧や継続の方向性が定まる

 

自然災害や突発的な事故は、ある日突然起こります。緊急時は疲労や緊張感から冷静さを失い、的確な経営判断ができなくなることも多いです。BCPをあらかじめ策定しておくことで、緊急時も事業継続や復旧のためにやるべき行動が把握できます。

 

企業としての信頼が高まる

 

BCP策定は、企業としての信頼性を高める上でも重要です。事業が停止すれば、取引先や顧客などの利害関係者(ステークホルダー)へも多くの影響があります。BCPを策定しておくことで、緊急時にも事業の早期復旧や継続ができることから、安定した経営基盤のある企業と評価されるでしょう。BCP策定を行っているという理由から、取引先として多く選ばれる、企業のイメージアップにつながる、といったメリットも得られます。

 

BCP策定の手順と方法

 

中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」によると、BCPは以下の手順で策定することを推奨しています。

 

1.優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する

2.緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく

3.緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客とあらかじめ協議しておく

4.事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく

5.すべての従業員と事業継続についてコミュニケーションを図っておく

6.運用体制を立案しサイクルを回す

 

手順に従い、具体的なBCP策定の方法を解説します。

 

中核事業の特定

 

緊急事態発生時、複数の事業を同時に継続または復旧されることは非常に困難です。そのため、BCPでは自社または自団体にとってもっとも重要な事業(中核事業)を優先的に継続または復旧させます。BCP策定では、自社にとっての中核事業をまず洗い出しましょう。

 

中核事業の特定には、売上が高い、利害関係者への影響が大きい、といった観点はもちろん、緊急事態でも少ないリソースで展開できる、といった観点から中核企業を定めるのも良いでしょう。

 

目標復旧時間の特定

 

中核事業を特定したら、目標とする復旧時間を定めます。以下の災害発生時から事業復旧までの行動を踏まえて、目標復旧時間を特定しましょう。

1.被害状況や従業員の安否確認をする

2.事業の代替手段による仮復旧

3.平常操業に戻す復旧作業

 

事業の復旧に動き出すためにまず行うべき行動が、被害状況や従業員の安否確認です。たとえば災害などの緊急事態が発生した場合の通信手段として、IP無線機が有効です。IP無線機なら1対複数の連絡を迅速に行えるため、被害状況や従業員の安否確認を一件ずつ行う必要がありません。災害発生時の初動を迅速に実行でき、事業の復旧時間の短縮にもつながります。

 

顧客と緊急事態に提供できるサービスを協議しておく

 

緊急事態によって事業が停止すると、平常時と同等のサービスを提供することは非常に困難です。あらかじめ顧客と緊急事態に提供できるサービスの内容や質に対して協議をしておくことで、顧客側に発生する事業停止による影響を最小限に抑えられます。

 

また、取引先や同業者と緊急事態における相互支援について取り決めをしておくことも重要です。企業や団体同士で緊急事態に手を取り合うことで、互いの事業復旧のスピードアップや継続にもつながります。

 

緊急事態の代替案の準備

 

緊急事態は、平常時に使用している機器が使用できない、従業員が確保できないといった事態が発生します。緊急時でも事業の継続および普及のために、代替案を検討しておきましょう。

 

たとえば小売業ならライフラインの停止によるPOSレジ稼動停止の代替案として手計算や現金会計を行う、レジの規模を縮小する、といったことが考えられます。製造業なら、ふだん稼動している工場が被災した場合の代替案として、被災していない地域に製造拠点を配置する、といった方法があります。

 

緊急事態の代替案は、平常時も活用できる手段を選択することでBCPへ導入するハードルも低くなります。たとえばIP無線機なら、平常時は営業車間での連絡手段として、緊急事態では1対複数の連絡を迅速に行うツールとして、代替拠点と本部との連絡手段として活用できます。

また、IP無線機には端末の位置情報をリアルタイムで監理することができる動態管理システムが標準装備されているため、社用車の状況把握にも活用できます。移動を伴う業務がある場合はさらにメリットを感じることができるでしょう。

 

すべての従業員にBCPについて話しておく

 

BCPを策定しても、従業員に定着しなければ緊急事態に効果は発揮されません。すべての従業員はBCPの対象となり、実際の緊急時には従業員の行動が計画の成否を左右します。BCPの運用に対して従業員の参加意識を高めるためにも、BCPについて周知する機会を持ちましょう。

 

運用体制を立案しサイクルを回す

 

BCPの基本方針が定まったら、BCPの運用体制を構築します。運用体制は、経営者自らが率先して策定・運用推進にあたることが重要です。経営者自らがリーダーシップを発揮しBCPの策定と運用を推進することで、BCPの定着が進みます。

 

社内で総務、財務、労務、技術、営業などの各部署や部門が分かれている場合は、サブリーダーとして各部署からBCPの運用体制に参画させます。

 

緊急事態が発生すれば、策定したBCPを発動します。発動したBCPを踏まえて改善点を洗い出し、必要に応じて改善や修正を加えてBCPを維持するサイクルを回します。

 

まとめ:BCP策定は企業の能力を維持するためにも重要

 

BCP策定の重要性やメリット、手順に沿った策定方法を解説しました。BCP策定を行うことで、自社や自団体の事業停止による廃業を防げます。いつ起きるか分からない災害をはじめとした緊急事態に備え、防災対策とともにBCP策定を進めておきましょう。