2023.08.31 IP無線機

IP無線機とは?通話の仕組みや使い方、最新機種を紹介

現在業務用無線機と呼ばれている機器にはさまざまな種類があります。

デジタル無線機、IP無線機、MCA無線機、トランシーバーやインカムなどがありますが、それぞれ特徴があります。

皆さんの業務に最適な業務用無線機を選ぶためには、その特徴をしっかりと理解することが必要です。

この記事ではIP無線機とはどのような特徴を持った業務用無線機なのかを解説します。

 

IP無線機とは

IP無線機とはIP(インターネットプロトコル)通信を用いて音声通話を行う業務用無線機のことです。

 

IPとは

“IPとは、パケット交換の仕組みを用いてコンピュータやネットワークを相互接続する通信プロトコルのことである。RFC 791で定義されている。

 

IPはインターネット上でデータ伝送を行うためのプロトコルとして利用されている。逆に、IPによって結ばれたネットワークがインターネットである、と言うこともできる。”

引用:IT用語辞

 

上記のような仕組みを活用した業務用無線機ですが、一般の方にはわかりづらい部分も多いでしょう。

「インターネットを活用した業務用無線機」と表現すればわかりやすいでしょうか。

つまりIP無線機とは、従来の自営基地局を経由した通信ではなく公共のインターネットを利用した無線機であると言えます。

 

従来の業務用無線機とは違い免許や設備設置が不要な点、通信範囲の広さから屋内・屋外問わず大規模なイベントや大会で導入されているケースも多くなっています。

 

IP無線機の仕組み

IP無線機とはインターネットを活用した業務用無線機であると説明しました。

IP無線機にはみなさんが普段使っているスマートフォンと同じでSIMカードが挿入されており、キャリアの通信インフラを利用して通話を行います。

現在国内にはいくつものIP無線機メーカーがあり、それぞれがMVNO事業者として国内キャリアから帯域を借りてサービスを展開しています。

MVNOとはキャリアから通信回線を借りて様々なITサービスを提供している事業者のことで、身近なところでは格安SIMなどもMVNO事業者にあたります。

「キャリアから通信インフラを借りて通話を行うなら携帯電話やスマホでいいのでは?」そのように思われる方も少なくありません。

ここからはIP無線機が業務用の通信手段として優れていると言える特徴をご紹介します。

 

IP無線機のメリットとは【他の無線機と比較】

IP無線機とはインターネットを活用した無線機です。

インターネットを活用することで、従来の業務用無線機よりもとても便利な無線機となっております。

ここからはその特徴をいくつか紹介します。

まずはデジタル無線やMCA無線などの業務用無線機と比較してどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

無線免許が不要

一般的な業務用無線機を利用するためには通常免許に関する届け出が必要です。これは導入時だけでなく、数年に一度の更新も行わなければなりません。

一方でIP無線機の場合は、キャリアの通信インフラを利用するため免許に関する手続きが全く必要ありません。

これにより導入、維持管理にかかる手間が大幅に削減されました。また、無線機の管理担当者が変わる場合でもスムーズに引継ぎができるようになり利便性が向上したと言えるでしょう。

業務用の通信機器として維持、管理に手間がかからないという点は大きなメリットです。

無線機の免許について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。

【5分でわかる】無線機の免許制度の概要から申請手順まで徹底解説

 

通信エリアが広い

皆さんが普段利用しているスマートフォンや携帯電話は、キャリアのサービスエリア内であれば日本全国誰とでも通話ができると思います。

IP無線機も同様に、キャリアのサービスエリア内であれば通話が可能です。従来の業務用無線機は基地局から電波の届く範囲(設備によって距離は様々)でしか通話が行えないものが多く、使用範囲が限定されていました。

IP無線機の登場により今まで無線機とは無縁だった業界でも導入が加速したことは言うまでもありません。

また、キャリアの通信インフラは今でも日々改善、拡張が進んでいます。通信エリアが広くなることに加え、やり取りできるデータの量が増えることで様々な情報をやり取りすることができるようになっています。

このように常に最新の通信インフラを利用できるという点も覚えておきましょう。

通話以外の機能も充実

無線機と言えば通話を行うための機器というイメージが強いですが、IP無線機はインターネットを利用しているため音声以外の情報もやり取りすることができます。

・GPS情報

IP無線機はGPSを搭載した端末が各メーカーから販売されており、無線機の位置情報をリアルタイムで確認することができる機能が付いています。

位置情報を確認できることで、現在地の確認はすべてPC画面上で行えます。また、動態履歴が参照できるものもあります。

・テキストメッセージ

無線機同士、または無線機と事務所との間でチャットを行うことができます。

音声では細かいニュアンスが伝わらない場面、音声だけでなくテキストとして情報を記録しておきたい場面で重宝する機能です。

・画像、動画

最近では通信インフラの発達により、画像や動画もスムーズに送受信ができるようになりました。これはスマートフォンだけでなくIP無線機でも同じです。

音声、テキスト、画像をうまく組み合わせて利用することで、従来の業務用無線機では実現できなかった情報のやり取りができるようになります。

 

最新の機能を利用

IP無線機はインターネットを利用したアップデート機能により、常に最新の機能を利用することができます。

万が一無線機に不具合が起きた場合でも、ソフトウェアの問題であれば機器を入れ替えることなく復旧が可能です。

IP無線機はランニングコストがかかってしまうため、従来の業務用無線機より割高だと感じている方もいるかもしれませんが、最新の機能を使い続けられることはコストをかけてでも享受したい大きなメリットになります。

 

IP無線機のデメリットとは【他の無線機との比較】

ここまで他の業務用無線機と比較した場合のIP無線機のメリットを紹介しましたが、デメリットとは何でしょうか?

キャリアの通信を借りてインターネットを利用する機器だからこそのデメリットもしっかりと把握しておきましょう。

月額利用料がかかる

IP無線機とはキャリアの通信網を利用してインターネット接続を行い通話する機器です。

スマートフォンを使うためには毎月の利用料がかかるように、IP無線機を使う場合でも月額利用料が発生します。

これは従来の業務用無線機との大きな違いであり、重要なポイントとなります。

メーカーや機種によって料金はさまざまで、必要な機能によっても変動します。

たくさんの料金プランがあるため、IP無線機を購入する際は予算などを伝えて、最適なプランで契約できるように情報収集を行いましょう。

メーカーによってこちらで紹介したような機能を標準機能として使えるものや、追加料金が発生してしまうものがありますので必要な機能をすべて使える状態にした場合、トータルでどれだけのラニングコストがかかるのか試算することも重要です。

 

通信エリアはキャリアに依存する

IP無線機はdocomo、au、softbankなどキャリアの通信を利用するためその品質はキャリアのインフラに依存してしまいます。

万が一、通信障害などが発生した場合は通話ができなくなってしまいます。ただし、キャリア側も万全な管理体制を整えており、日々改善されているため不安視しすぎる必要はないように思います。

また、現在いくつかのIP無線機メーカーからは複数キャリアが利用できるサービスが登場しており、こちらを活用することで通信障害などのトラブルへの対策をとることができます。

このように説明するとリスクばかりが気になってしまいますが、スマホ全盛期の現代ではキャリアの通信インフラは多額のコストをかけて日々改善され高品質なものへと進化しています。

最新の通信を利用できるという視点でみるとキャリアに依存することはメリットと言えるかもしれません。

 

IP無線機のメリット【スマホや携帯電話と比較】

皆さんが普段利用しているスマートフォンも、IP無線機もキャリアの通信を利用した通信機器です。

この記事を読んでいる方の中には「なんでスマホじゃダメなの?」と思われている方も多いのではないでしょうか。

ここからはIP無線機とスマホ・携帯電話を比較した場合のメリットを紹介します。

1対多数の通話が得意

IP無線機は1対多数の通話が頻繁に発生する場面で強みを発揮します。

業務用無線機の1種であると紹介しましたが、業務連絡と通常の雑談ではグループ通話や一斉通話に求める機能が変わってきます。

LINEなどのグループ通話では通話に参加している全員がいつでも話すことができる反面、通話に参加する人数や同時に話す人が多くなると情報が整理できなくなるというデメリットになります。

これは業務連絡の通話として最適とは言えません。IP無線機であればPTTを採用しているため1対多数の通話になっても情報の聞き漏らし防止につながります。

業務用無線機を使ったことがない人は特にこの点を忘れてしまいがちですので、通話方式の違いについてもしっかりと理解しておきましょう

受話操作が不要

もう一つの大きなメリットは通話に必要な操作がとても簡単であるということです。なかでも受話操作が必要ない点はスマホや携帯電話と大きく違うポイントとなります。

通常の電話は相手からコールがあった場合に、受話操作を行って通話を開始します。

一方IP無線機では受話操作が必要ないため受話操作なしで相手の声を聴くことができます。これは運転中など通話端末を操作できない場面でとても大きなメリットになります。

またメーカーによっては応答しなかった場合にアラート音を出したり、聞きなおし機能が備えられているモデルもあるためとても便利です。

また、最新のスマートフォンはタッチ画面で手袋などを装着していると操作感が著しく低下します。一方でIP無線機は物理ボタンのみで通話が開始できるため手袋を使うシーンでも活躍します。

 

最新のIP無線機を紹介

最後におすすめのIP無線機を紹介したいと思います。

ハンディ型IP無線機 IM-560【モバイルクリエイト】

ハンディ型IP無線機IM-560はモバイルクリエイトから発売された最新のIP無線機です。

旧機種のIM-550と比較して画面サイズが大きくなり、テキストや画像・動画などが扱いやすくなりました。

また、Googleプレイストアにも対応したことで他のアプリと組み合わせて利用することができ、端末の一本化による業務効率の向上が期待できる端末となっています。

また、モバイルクリエイトのハンディ型IP無線機は動態管理システム、チャット、画像・動画の送受信がすべて標準機能となっており無料で利用することができます。

車載型IP無線機 IM-860【モバイルクリエイト】

車載型IP無線機IM-860はモバイルクリエイトから発売されています。こちらの製品の特長は取り付け工事なしで車載型IP無線機として利用を開始できる点です。

USBまたはシガーソケットから給電することができるため、ケーブルを差し込むだけで利用が開始できます。

運送業や配送業のような車両の入れ替わりが激しい業種では無線機を簡単に取り付け、取り外しできることが大きなメリットになります。

もちろんこちらも動態管理システムが無料で使えますので、車両の位置情報をリアルタイムで確認することが可能です。

IP501H【アイコム】

IP501Hはアイコムから発売されているハンディ型IP無線機です。

業務用無線業界で有名はアイコム社の無線機でさまざまなところで利用されています。

そのため、IP無線同士だけでなく特小無線などとも通信することができるシステムがあります。

801KW【Softbank】

801KWはSoftBankから発売されているハンディ型IP無線機です。

IP68相当の防水、防塵機能を有しており高い耐久性を誇っています。また、災害時の緊急速報メール受信にも対応しており、災害対策としての活用もされているようです。

 

まとめ

この記事はIP無線機とはどんなものなのかを詳しく解説しました。

最新の技術を活用した無線機で、今後もさまざまな分野で活用が進むでしょう。

IP無線機の導入を検討中の方は、メリット・デメリットについて正しく理解して最適な機種を選んでみてください。