2020.10.19 コラム
無線機とは?その種類や特徴・用途を分かりやすく解説
携帯電話が広く普及し始めたのが1990年代後半ですが、今では大人ならほぼ全ての方が携帯電話を所有しています。
一方で、今でも無線機を使用しているシーンを多く見かけます。無線機ならではの利点があるためです。
今回は、無線機の種類や特徴、用途などをわかりやすく解説します。
目次
そもそも無線機とは?
無線機とは、無線通信を行うための機器を指します。
この無線通信とは一般的に音声通話でコミュニケーションをとるような通信のやり取りを指します。
警備員同士の無線機を使った通話やレストランや居酒屋で店員同士がインカムを利用して会話を行っていることを見る機会があると思います。これらが無線機を使った通信の例です。
しかし、警備員が使っている無線機と居酒屋のスタッフが使っている無線機が同じものかと言われるとそれは違います。
なぜなら、業務内容や利用用途によって無線機に必要な機能が異なるからです。無線機とはどういうもので、どんな種類があるかをしっかりと理解することで、活用の幅が広がるでしょう。
では無線機にはどのような種類があって、どのような機能差があるのでしょうか?
無線機の特徴は、下記のようなポイントで機器ごとに機能差があります。
- 通話モードの種類
- 通信エリア
- コスト
それでは各項目について詳しく紹介します。
1.通話モードの種類
無線機の特徴として、一斉に複数の人に連絡できるという点があります。
これは携帯電話やPHSは基本的に1対1で通話を行うのに対し、情報共有のスピードが格段にアップします。
また、ただ単に一斉通話ができるわけではなく、あらかじめ設定したグループ内でのグループ通話が行える無線機も続々と登場しています。アナログ無線機、デジタル無線機、MCA無線機、IP無線機、インカムなど様々な種類の無線機が多種多様な業界で使用されています。
ここでは特に柔軟な通話モードの設定が出来るとされているIP無線機の通話モードの一部をご紹介します。
①一斉通話
同じネットワーク内に存在する無線機に対して、一斉に同じ音声を届けることが出来ます。
②グループ通話
同じネットワーク内にある無線機を更にグループ分けし、チームレベルで同時通話を行うことが出来ます。
大きな組織で無線機を運用しようとすると一斉通話だけでは運用が難しいケースが多々あります。
そのような場合には指示系統ごとにグルーピングをして通話を行うとよいでしょう。
③優先通話
優先通話はIP無線機だからこそできる個性的な通話モードで、無線機ごとに優先順位付けができるようになります。
通常の無線通話の場合、発言権があるのは一番早く通話ボタンを押した人です。しかし、チームリーダーなど権限の強い人の無線機に優先権を付与することで、大事な情報を最優先で共有することが出来ます。
いかがでしょうか?
一斉以外にもたくさんの通話モードがあるIP無線機の例を紹介してみました。更に知りたいというかたは「IP無線機の通話モード」こちらのページをぜひご覧ください。
2.通信エリア
無線機の場合、主に特定小電力無線機、中距離の通信ができるデジタル簡易無線機、業務用無線機、遠距離向きにMCA無線機やIP無線機があります。
それぞれに、電波の違いによって以下の範囲まで使用可能です。
- 特定小電力無線機:100~300m
- デジタル簡易無線機:1~5km
- 業務用無線機:10~20km
- MCA無線機:30km~40km
- IP無線機:100km以上
個人で使用するレベルの特定小電力無線機から、ほぼ携帯電話の通信範囲と同じレベルで使用できるIP無線機まで、多種多様なものがあります。
特定小電力無線機の場合は、価格も安価で誰でも導入できますし、IP無線機のように業務でも十分に使いこなせる点が評価できます。
3.コスト
ここまでは無線機の機能面について比較してきましたが、無線機を利用するにはもちろんコストがかかります。
そこで無線機の導入から運用にかかるコストを比較して見ましょう。
①業務用無線機
業務用無線機の場合は、導入時に無線機の購入とアンテナの設置が必要になります。
後に紹介するMCA無線機やIP無線機の場合、既に設置されてある基地局を利用するため業務用無線の導入に比べるとイニシャルコストが安くなる傾向にあります。
ただ、業務用無線機は一度導入してしまえばランニングコストをほぼ必要としないため、広い通信エリアを必要としない業種や、通信エリアの拡張の可能性がない業種ではおすすめです。
②MCA無線機
MCA無線機は一般社団法人移動無線センターが運営している基地局を利用して通話を行う無線機です。
業務用無線機は自社で基地局の設置を行う必要があるのに対し、MCA無線機の場合は自社での設置が必要ないためイニシャルコストを抑えることが出来ます。
ただし、月々の利用料が発生するため無線機を使用している期間に発生するランニングコストは業務用無線機よりも高くなります。
③IP無線機
IP無線機はドコモ、ソフトバンク、KDDIなどのキャリアの通信網を利用して無線機の通話を行います。MCA無線と同様で自社で基地局を設置する必要がないためイニシャルコストが安く抑えられます。
携帯電話やスマートフォンが全国で通話できるように、IP無線機も全国で利用が出来ます。
無線機を利用するエリアが広くなっても追加料金が発生しないため、導入時点で広範囲での利用が想定される場合はIP無線機を選ぶとよいでしょう。
上記のように、無線機ごとで料金体系は大きく変わってきます。
自社の運用で一番費用対効果の高い運用ができる無線機を選ぶことが重要です。
【豆知識】災害時での繋がりやすさ
携帯電話で問題になるのが、災害時に繋がりにくくなる点です。とくに大災害が発生した直後は、安否確認も容易に行えないほど混雑します。
無線機の場合は電波帯が広いこと、個人で持ち歩いている方が少なく電波に空きがあることや、パケット通信を利用しているものもあるため災害現場でも安定して繋がりやすいのです。
この特徴を活かして、警察官や消防士も携帯電話ではなく無線を使用して連絡を取り合っています。
特にIP無線機は東日本大震災や、熊本地震などの大規模自然災害時にもしっかりと通信ができたという実績があり、注目を集めています。
万が一のことを想定して、機能比較を行うことも忘れないようにしましょう。
無線機の種類とその用途
無線機には多くの種類があります。それぞれに特徴があって、得意分野も異なるのです。
主な無線機の種類と用途は、以下の3つです。
1.トランシーバー
トランシーバーとは、特定小電力トランシーバーとも呼ばれる無線機です。
出力が5W以下の簡易業務用無線機よりもさらに通信範囲の出力が低く、総務省に無線局免許状の申請をする必要がありません。誰でも無免許ですぐに利用できるのが特徴です。
最大でも300mしか通信できませんが、運動会や小規模のイベントなどで用いられています。
2.業務用無線機
業務用無線機とは、主に警察官や消防士、またタクシー運転手などが業務で使用する無線機のことを指します。業務で使用するため、より幅広い範囲での通信が必要で、トランシーバーとは異なり最大通信距離が10~20kmと幅広いのが特徴です。
業務用無線を使う場合は、業務内容に応じて無線従事者免許を保有している人材を配置しなければならないケースがあります。
たとえばタクシー業界。タクシー運転者のほか司令局が設置されている場合なら、司令局のスタッフが無線従事者免許を保有していれば、タクシー運転手が無線従事者免許を持っている必要はありません。一方、個人タクシーの場合は運転手本人が従事者免許を保有してなければならないのです。
3.IP無線機
IP無線機は、パケット通信を使用してデジタルデータや音声通信を行う業務用無線のことを指します。パケット通信網を使用するために、全国どこにいても通話できるのが魅力的です。
GPSを搭載している機器では動態管理が行えたり、ほかの無線とは一線を画する機能が満載です。
主に、大規模なイベントや広範囲が対象となるタクシーやバス、そして長距離トラック運転手も導入しているケースがあります。
無線機の利用に免許はいる?
1W出力以上の無線機を使用する場合、総務省総合通信局の免許を受けるために免許申請が必要です。もし免許申請を行わずに業務用無線機を使用した場合、電波法違反となり法的罰則の対象となるので注意しましょう。
5W出力のデジタル簡易無線を使用する場合は、免許申請は不要なものの、簡単な登録申請が必要です。
基本的に、高出力で幅広い範囲をカバーする無線機の場合は免許や届け出が必要ですが、なかでも唯一、IP無線機だけは免許制度がありません。
まとめ
無線機は仕事やイベントなど、さまざまな場面で活用されています
グループトークや利用範囲、災害時の繋がりやすさの点において、無線機は携帯電話などの通信機器とは異なる特徴をもっています。
無線機の主な種類は、トランシーバー・業務用無線機・IP無線機の3つです。それぞれの職場、イベントなどで、用途に合ったものが使用されています。
高出力の無線機は免許が必要になるケースもあるため、注意しましょう。各無線機の特徴をしっかり理解して、適切な無線機を導入することが大切です。