2024.03.11 防災

地域の安全を確保するための無線技術を活用した自治体の防災DXの3つのポイントとは

自治体は、地域の安全を確保するための防災対策が求められています。そのためには、情報伝達がとても大切で迅速化や効率化といった要素も欠かせません。

これまでの無線通信をより活用しやすい防災DXのツールとしてIP無線機を利用することができれば、地域の安全は飛躍的に向上することになるでしょう。

そこでIP無線機とはどのようなものなのか、どのようなメリット・デメリットが存在するのか、どのように活用することが望ましいのかなど、防災DXのツールとしてIP無線機をご紹介します。

IP無線機を活用した自治体の防災DXで情報伝達の迅速化と効率化

自治体の防災対策を考える際には、地域の安全を確保することを最優先する必要があります。そのためには、適切な情報伝達の迅速化と効率化がとても重要です。従来から利用されている無線通信を自治体の防災DXとして、さらに使い勝手良い通信手段として発展させることが課題となります。

そこでおすすめしたいのがIP無線機の活用です。IP通信インターネットプロトコルを利用した無線通信のことをいいます。この仕組みを利用したIP無線機は、これまでの業務用無線機と比べて、情報伝達の迅速化と効率化が可能です。

特に災害時には、迅速な情報伝達が求められますので、IP無線機の活用は非常に有効性の高い通信手段となります。なぜなら、IP無線は通話距離が長く、音声が安定している上に、秘匿性に優れておりセキュリティ面でも高い特性を持っているからです。

現在世の中で使われているIP無線機はdocomo、KDDI、SoftbankのようなキャリアのLTE通信網を利用して無線通話を行っています。

つまりLTE通信が使える場所であれば日本全国どこにいても無線機の通話を行うことができます。これは他自治体への災害支援時や市町村合併時など、当初想定していた通信エリアではないところで通信が必要になった場合に大きなメリットとなります。

無線技術を活用した自治体の防災DXとしてIP無線を導入した場合、これまでよりも迅速かつ効率的な情報の発信と共有によって、地域の安全を確保することができます。

具体的には、発生した災害の情報や避難等の指示の発信が、自治体職員や住民に対して素早く伝えることが可能です。

IP無線機は一斉通話やグループ通話をはじめとする、1対多数の通話を得意としています。災害時には関係各所へ逐次災害の状況や支援の状況を連絡する必要があります。時には数十か所に上る関係先に携帯電話やスマホを使い一つ一つ連絡するのは現実的ではありません。

また音声だけでなく、位置情報のリアルタイム監視や画像や動画の送受信ができるので、音声だけでは伝わらない、伝えづらい災害の状況や避難経路などの情報をより分かりやすく伝達可能です。

 

IP無線を活用した自治体の防災DXのポイント①メリット・デメリット

情報伝達の迅速化と効率化によって地域の安全を確保するために、IP無線の活用が適していることをIP無線の特徴を踏まえてご紹介しました。

ただIP無線を活用した自治体の防災DXには、メリットだけでなく、デメリットや課題も存在します。ここでは、IP無線のメリットとデメリットについて見ていきます。

 

IP無線の最大のメリットは一斉連絡に強いこと

IP無線は一斉連絡に強い、これが防災DXとしておすすめする最大のメリットであり理由です。

無線機はPTTボタンを押すだけで情報共有をするメンバー間で即時に通話を開始することができます。

災害時は1分1秒を争う状況が多発し、通常の電話だと受話操作ができなかったり着信に気づかなかったりすることがあります。

IP無線機の場合は無線のPTTトークの性質上受話操作が必要ありません。また着信した音声は外部スピーカーやイヤホンから聞こえてくるため、聞き逃し防止の効果も期待できます。

災害時の通信機器を整備する際はどうしても実際の状況を想像することが難しく、無線機による通話のメリットがわかりづらいという方が多いですが、緊迫した場面やたくさんの重要な情報が行き交う状況をリアルに想像できればIP無線機の通話に大きなメリットを感じることができるでしょう。

 

デメリットはランニングコスト

IP無線導入のデメリットは、ランニングコストがかかるという点が挙げられます。IP無線を利用するためには、災害が起きていない平時でも月額の利用料が発生します。

IP無線機以外の無線機についてはランニングコストがかからないものも多く、そういった機器からの乗換の際には一つのデメリットとなります。

ただ、他の無線機に比べ通信距離が圧倒的に広いことや、画像動画の送受信、動態管理などの機能が搭載されていることを考慮すると平時から活用できる場面は少なくありません。

例えばイベントでの職員間連絡、公用車を使った業務での動態管理、防災訓練など活用できるところはたくさんあります。

ランニングコストが気になる場合は、平時から活用できるところがないか検討してみるとよいでしょう。

 

課題は災害時に上手く活用できるかどうか

デメリットはあるものの、災害への強さ、情報共有や協働に有効というメリットは、災害時の通信手段としてとても有効です。そのため導入した際には、操作方法を理解し、迅速に活用できるかが課題です。この課題をクリアしなければ、「災害への強さ、情報共有や協働に有効」というメリットが半減してしまいます。そのため熟練度を高めておくことが必要です。すなわち、どのような災害対策訓練であっても、IP無線を利用するシナリオの訓練が必要となるでしょう。

 

IP無線を活用した自治体の防災DXのポイント②IP無線を活用する訓練の必要性

IP無線を活用した自治体の防災DXの2つ目のポイントとして、IP無線を導入した場合には最適な活用方法の把握と熟練度向上を目指した訓練実施が必要です。

また実際の運用を想定し、避難訓練や避難所開設訓練などに無線通信訓練を組み込むことも検討する必要があります。災害発生時のスムーズな活動を促進するため、住民に対して無線機設置の周知を行い、地域全体での協力を図ることも大切でしょう。

使用方法の確認と練習を兼ねたIP無線通信訓練

単に、IP無線を設置して通信手段を確保するだけではなく、防災DXとして適切に運用できるようしておくことが重要です。

IP無線の操作方法を理解し、災害時に迅速に活用できるように、まずは単独のIP無線通信訓練から始めましょう。

自治体の防災担当職員間で、無線通信について理解を深め、他の自治体職員にレクチャーできる状態を目標に取り組みます。繰り返しIP無線通信訓練を実施し、訓練を経験した職員数を増やしていくことが大切です。

自治体職員だけでなく住民に対して無線機設置の周知

IP無線のような機器の設置は、自治体職員間だけでなく、地域住民に対しても導入・設置について周知しておくことで、いざというときに活用しやすくなります。

防災に対して、公助だけでは限界があり、共助・自助を想定しておくことも必要だからです。

いきなり地域住民がIP無線の操作することを想定しなくても、地域住民がIP無線の存在を知ることから始めるだけでも、防災DXの意味があるでしょう。

 

IP無線を活用した自治体の防災DXのポイント③課題の把握

自治体の防災DXでは、無線設備を設置、運用するだけで終わらず、適切に運用するための課題を把握し、解決することを目標としましょう。

すなわち、住民が恩恵を受けるためには、防災DXの活用方法を共有し、課題についての認識も共有することが重要になります。

自治体の防災DXは、どのようなデジタル技術を採用するかではなく、どのようにデジタル技術を活用するかが基本となる考え方です。

自治体の防災DXは無線設備を設置ではなく運用するため

自治体の防災DXに取り組む自治体職員は、必要な設備を検討し、計画を立て、予算を組まなければなりません。

そのため、設備を設置することが目標となりがちですが、どうしてその設備が必要となったのか、設置に至った経緯を踏まえて、どのような課題を解決するための計画であったのかを認識しましょう。

自治体の防災DXでは、単に無線設備を設置するだけではなく、その運用方法を理解し、実際に活用することが重要です。

自治体の防災DXを活用できてこそ住民が恩恵を受ける

IP無線などのデジタル機器の設置・運用を行う自治体職員が、求められる役割を果たすことによって、地域住民が恩恵を享受することが自治体の防災DXの最大の目的だといえるでしょう。

そのため、避難訓練や避難所開設訓練などを自治体職員と地域住民が一緒になって取り組み、防災DXについても活用方法を住民に周知し、課題の把握と解決方法を検討していくことが求められます。

自治体の防災DXは備えであるという認識の共有

自治体の防災DXは「備え」であるという認識を共有することが重要です。防災DXの取り組みで、災害対策が解決するということはありません。

災害は予測不可能であり、発生するさまざまな問題や課題に対して、この備えがあればその影響を最小限に抑えることに役立てられるという理解が必要です。

 

自治体の防災DXは何を採用するかではなくどのように活用するかが基本

今回ご紹介した自治体の防災DXは、何を採用するかではなく、どのように活用するかが基本です。IP無線を活用した防災DXは、その一例となります。

災害に強いというメリットは防災DXには必要不可欠ですが、どのような通信手段を導入してもデメリットは存在するでしょう。

すなわち、「デメリット=良くない」ではなく、最大限メリットを活かして、デメリットを意識しなくなるような機器選定・地域での活用方法・災害時の運用方法とすることが重要です。

防災DXによって導入する設備の活用方法をしっかりと理解し、繰り返し訓練を行い習熟度の向上を目指し、課題の把握・解決を実行することで地域の安全を確保することができます。