2024.09.12 防災
地震発生時に自治体に求められる初動対応と自治体だからこそできる対応策とは?
目次
地震が発生した時に求められる自治体の役割とは
自治体においては、地域住民の安全を守り、災害の発生時に被害を最小限に減らすために、日頃から防災に取り組むとともに、地域住民と一丸となって助け合える環境を整備することが求められます。
地震発生時には、生活インフラの断絶、交通インフラの途絶、津波を伴う地震であれば沿岸部の都市機能の麻痺などのリスクがあり、地域住民の安全を守るための迅速かつ的確な対応が必要です。
このようなことが想定される中で、自治体には住民の命・財産を守り、被害を未然に防ぐまたは最小限に抑えるための防災・減災への取り組みが欠かせません。
災害対策基本法によって、以下のような果たすべき役割が地方自治体には与えられています。
- 避難対策
- 災害対応体制の実効性の確保
- 情報収集や発信、広報の円滑化
- 避難所等などでの生活環境の確保
- 応援受入れ態勢の確保
- ボランティアとの連携や協働
- 生活再建支援
- 災害救助法の適用
- 災害廃棄物対策など
また地震発生時に自治体が想定している対応は、地震発生直後であっても迅速かつ的確な対応を行い、情報収集や指示の伝達を円滑に行うための体制を整えることを主としています。
つまり、関係各所への連絡体制を確立し、迅速に情報を伝達するとともに、地域ごとの被害状況の把握に努める初動対応です。
この初動対応に加えて、必要度の判断や被害状況を踏まえて、被災者を受け入れるために避難所の開設と運営対応を取ります。
また災害の規模に応じて、被災者の救助・救急活動の展開や道路や電力、水道などのインフラの復旧への対応を迅速に関係機関とともに実施する支援も自治体の役割です。
地震発生時における自治体の初動対応
地震発生直後の迅速かつ的確な情報収集、円滑な指示伝達体制を整える初動対応はとても重要です。
初動対応で躓いてしまうと、それ以降の対応が後手後手に回ってしまうなど、さまざまな影響が出てしまいます。
スムーズな初動対応を実施するためには、早急な災害対策本部の設置が大切です。
災害対策本部の設置と運営
地震発生直後には、災害対策本部を設置し、迅速かつ的確な対応を行います。災害対策本部が設置されると、情報収集や指示伝達がスムーズになり、関係各所との情報共有が円滑に進むだけでなく、住民への必要な情報提供や生活支援などを充実させることも可能です。
つまり災害対策本部が、各部門の役割分担を明確に示すことにより、スムーズな情報収集、被害状況の把握、救援活動の指揮など地域全体の対応を統括することができます。
この迅速な意思決定を行うために、災害対策本部の設置がとても重要です。
緊急連絡網の確立と情報伝達
自治体は、地域の特性に応じた情報伝達手段を確立し、住民に周知することが求められます。そのため緊急連絡網を確立し、被害状況の報告などを迅速に行い、情報を伝達することが重要です。
住民への避難指示などは、SNSや防災アプリを活用してリアルタイムで情報を共有することもとても有効だといえます。
避難所の開設と運営
避難所の設置と運営は、災害発生時の自治体の重要な役割の一つです。地震被害が想定される場合には、避難所を迅速に開設し、被災者を受け入れる体制を整えます。避難所は被災者の一時的な避難場所として機能するほか、食料や水の供給、生活必需品や情報提供、医療支援なども行います。
避難所では、被災者のプライバシーを確保し、快適な環境を提供することも重要です。そのため避難所の設営マニュアルの作成だけでなく、スムーズな運営ができるようにQ&A集の作成も大切になります。
首都直下型地震のような都市部特有の災害への対策
首都直下地震のような人口が集中する都市部での地震対策は、地方都市で発生する地震とは大きく異なります。
人が密集する地域での避難対策、ビルが密集する場所での建物倒壊、停電による都市機能のダウンなどの対応に備えておくことが大切です。都市部の自治体は、このような特性に応じた防災計画を策定し、住民に周知することが求められます。
また都市部にいる人が必ずしもそこの住民であるとは限りません。いわゆる帰宅困難者への対応も求められるのです。
例えば、帰宅困難者用の一時滞在施設を設置し、必要な支援を行うことはとても重要です。もし帰宅困難者用の施設を設置しなければ、避難所は住民と帰宅困難者で溢れてしまうかもしれません。
帰宅困難者用の一時滞在施設の設置について、どのように周知すれば効果的なのかなど、都市部特有の対策には多くの課題も残っています。
南海トラフ地震のような広域被害への対応
南海トラフ地震のように広範囲にわたる被害が予想される災害では、自治体間で連携を取った広域的な対応策が必要です。想定される震源域に近い自治体や太平洋沿岸の自治体だけでは、災害対応は立ち行かなくなることが想定されます。
例えば、広域避難計画の策定、遠隔地の自治体によるサポート体制などを想定しておく、効率的かつ効果的な対応策が重要です。さらに南海トラフ地震の対応策としては、津波避難タワーの設置などの津波対策を講じ、避難訓練の実施を含んだ迅速な避難計画を策定が求められます。
【地震発生時の迅速かつ適切な対応を可能にし、被害を最小限に抑えるためには災害対応訓練が重要。災害対応訓練のポイントはこちら:地震を想定した災害対応訓練のポイントは目的とフィードバック】
地震災害への応急対応と復旧・支援計画とは
被災者の救助・救急活動が必要な被害が予想されるような地震の場合には、自治体の迅速な対応が被害の軽減につながります。
例えば、これまでは難しかった孤立地域の状況を把握は、ドローンなどの機器を活用すれば、被害状況の把握や効率的な救助活動に活かせるようになります。地震などの災害への備えとして、地域の特性に応じた救助計画を策定し、訓練を実施しておくことが求められます。
医療機関・消防・DMATと連携した救助・救急活動の展開
地震災害が発生した場合、自治体は医療機関や消防、DMAT(災害派遣医療チーム)と連携しながらの救助・救急活動を展開することが重要です。
医療機関、消防、DMATが連携することで、被災した地域の限られた医療を有効活用でき、被災地域外の診療につなぐことにより、被災者の命を守ることも可能です。
被害状況と時季を考慮した被災者支援と生活再建支援
自治体の被災者支援としての取り組みはいくつかありますが、被災者が早期に生活を再建できるよう支援することが重要です。避難所対応や生活物資の支援、仮設住宅や災害復興住宅などの住民支援は、被害状況に合致した支援が大切になります。
暑い夏と寒い冬の時季の違いによる支援内容、単なる被害状況だけでなく自宅に住めるのかどうか、家族に高齢者の有無や乳幼児の有無など、早期の生活再建は被災者の要望に沿った支援が求められます。
優先すべき課題を踏まえたインフラの復旧と再建計画
インフラの復旧や再建計画は、すべての課題に対して同時進行することが難しいものです。そのため自治体では、取り組むべき課題の優先順を踏まえた対応が求められます。被災者の救助・救急活動の展開には道路の整備、生活基盤の再建には電力や水道などの復旧など、再建計画は被災地のニーズに合わせて迅速に対応することも自治体の役割です。
【市町村における防災対策について(平成26年6月4日内閣府(防災担当))
URL:https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/bousai_specialist2/01/pdf/shiryo5.pdf】
長期間において避難者の拠点となる避難所の設置と運営
避難所は、地震などの災害から逃れてきた住民の生活の拠点となる場所です。復旧や復興までの間、住民の安全を確保するだけでなく、良好な生活の基盤となる施設として重要な役割があります。
被災者への情報発信拠点としての役割
地震災害が発生した場合には、停電、道路の遮断などにより、正確で適切な情報が個々に提供することが難しくなると想定されます。自治体には、さまざまな情報が集約され、住民支援のための情報も持っています。
その自治体が運営する避難所が、住民向けの窓口のような役割を担えば、被災者への情報発信拠点としての役割も果たすことが可能です。
そのため避難所には、災害時によって通信が遮断された場合に備えて、災害対策用移動通信機器や非常用電源を準備しておくことも欠かせません。また、このような役割を避難所が果たすことを住民に周知しておくことも、正確かつ迅速な情報収集と住民への情報伝達を可能にします。
高齢者・子供などへの支援策
避難所では、高齢者や子供などへの支援策やサポートも重要です。高齢者や子供など、特別な配慮が必要な人々に対して、専門のスタッフを配置したり、避難スペースの区分けをしたり、迅速な対応や支援を実施できるように体制を整えておくことも自治体には求められます。
福祉避難所の設置と運営の必要性
福祉避難所の設置と運営は、特に高齢者や障害者などの弱者にとって重要です。自治体は福祉避難所を設置し、特別な配慮が必要な人々を受け入れる体制を整え、これらの人々に対する支援を行います。
一般の避難所運営と同様に、福祉避難所の運営マニュアルを作成し、スムーズな運営のサポートが必要です。福祉避難所では、医療支援や心理的ケアを提供することも重要で、医療機関や福祉施設などの関係機関と連携を取れるような仕組みを事前に構築しておきましょう。
まとめ
地震が発生した際に自治体に求められる初動対応と対応策について解説してきました。自治体は地域住民の安全を守るために、迅速かつ的確な対応を行うことが求められます。自治体が、初動対応から復旧計画まで一貫した対応を行うことで、被災者の生活再建を支援し、地域の早期復旧を図ることが可能です。
それぞれ地域の自治体だからこそ、住民や地域に対して果たせる役割があります。災害時だけではなく、平常時から地震が発生した場合の取り組みの周知、避難訓練など減災への活動を地域・住民とともに実施することが大切です。