2024.01.31 防災

災害対策本部訓練の9つのポイントから見える情報共有ツールの大切さ

災害対策本部訓練は、コントローラーとプレーヤーの役割に分かれ、災害対策本部の指揮命令系統の確立と災害の情報収集を行う訓練です。災害時には、届いた情報を吸い上げ、適切に対応するための指示を出すことが大切です。そのためには災害対策本部を立ち上げ、指揮命令系統を確立することが重要となります。

しかしながら、知りえた情報や報告をどこへ伝達すればいいのかわからない、担当する部署まで情報が届いているのに災害対策本部に届かず必要な対応が取れないということでは、情報が伝達されていても意味がありません。

そこで、情報収集訓練も同時に実施して、災害対策本部外の役割を持つプレーヤーがどのように情報を収集するのか、届いた情報をどのように役立てるのかを学ぶ機会とし、災害対策本部のプレーヤーも確立された指揮命令系統の訓練に役立ててください。

災害対策本部訓練のクオリティを確保するための3つのポイントとは

災害対策本部訓練を充実させるためには、コントローラーとプレーヤーの役割についての把握、実際の災害時を踏まえた行動や思考をどこまで盛り込んだ訓練とするのか、これらを共有しておくことが大切です。

なぜなら、この認識のずれによって、それぞれの目標値設定が異なり、訓練成果を左右することになってしまいます。つまり、「訓練だから・・・」という考え方を排除しておかなければ、取り組み方に齟齬が生じてしまうわけです。

シナリオの充実度と訓練成果のバランス

シナリオは、訓練を行ううえで基本となる条件設定、訓練内容の濃さ、訓練の方向性、訓練に盛り込む課題、訓練の目標値を踏まえて作成します。このシナリオのクオリティによって、訓練内容の充実度や達成度が左右されると言ってもいいぐらい重要です。

しかしながら、このシナリオが細かすぎたり、ボリュームが大きすぎると、シナリオに従った行動をするだけの訓練となりかねません。内容の濃いシナリオを完成させることが訓練ではなく、実際にどのように行動できたかが訓練の本質となります。

訓練では、プレーヤーの想定外の行動、情報伝達や報告方法などにはプレーヤーの個人差があるため、シナリオには適度な充実度とプレーヤーが行動しやすい余白部分が必要です。すなわち、訓練に方向性を与え、訓練の成果が得られるようなバランスがシナリオには求められます。

コントローラーの柔軟さと現実感

訓練の主役は、シナリオでもコントローラーでもなくプレーヤーです。その主役であるプレーヤーが行動しやすいよう、シナリオを基に導くのがコントローラーの役割となります。

コントローラーは、訓練の指揮役であり、プレーヤーが関わる外部役も果たす重要な立ち位置です。シナリオによって定められている目標値達成に向けて、さまざまな課題をプレーヤーに付与する役割がメインでありながら、必要以上に制限をかけることなく、プレーヤーの行動に合わせて外部役として臨機応変に対応することもあります。また実際の災害発生時を踏まえ、難しい対応を外部役としてプレーヤーに課すことも必要です。

つまり、訓練進行のための柔軟さと厳しい現実感をプレーヤーに与える重要なポジションとなります。

プレーヤーの積極的な役割意識

先ほども触れましたが、訓練の主役はさまざまな役割を与えられているプレーヤーです。災害対策本部訓練は、確立された指揮命令系統によって、プレーヤーが集められた情報を基に判断して指示を出し、その指示を受けて対応する訓練となります。

訓練の目標値達成や成果を判断するには、プレーヤーが積極的に役割意識を持つことが欠かせません。完成度の高いシナリオであっても、どれだけコントローラーが経験豊富でも、プレーヤーの役割意識がなければ訓練自体が意味を成しません。

すなわち、どの役割のプレーヤーがどのような課題を感じたか、プレーヤーのどのような行動によって課題をクリアできたかなどを評価し、今後に反映することが災害対策本部訓練の成果となります。

 

災害対策本部訓練で目標値として設定すべき3つのチェックポイントとは

訓練を実施するうえで、目標値の設定は課題の抽出と現時点での達成度を理解するために重要な要素となります。災害対策本部訓練では、災害対策本部体制、情報収集等について達成すべき項目、課題クリアの可否などを判断すべき目標値として設定することが望ましいでしょう。

災害対策本部の指揮命令系統の確立度

災害対策本部訓練では、災害対策マニュアルやBCP(事業継続計画)に規定されている通りに、災害対策本部の設置を目標値と設定しまいがちです。しかしながら、この訓練は、災害対策本部を立ち上げることを目的としているのではなく、災害対策本部の指揮命令系統を確立させることが目的となります。

つまり、災害対策本部訓練の目標値には、災害対策本部の立ち上げ、災害対策本部長ならびに災害対策本部と各担当間での情報伝達・指示対応遂行の確立を設定すべきです。そして、どのような状態を立ち上げたと判断するか、どのように情報伝達・指示対応の遂行ができていれば確立できたと判断するかを事前に確認しておき、訓練後にその達成度をチェックしましょう。

プレーヤーの役割ごとの想像力

災害対策本部訓練において、参加するプレーヤーの目標値設定は、訓練の成果に大きく影響を与える重要なポイントです。

プレーヤーが単に役割を果たすだけ、コントローラーからの課題を受けるだけでは、内容の薄い成果が得られない訓練となってしまう可能性があります。つまり、災害発生した場合にプレーヤーがどのような状況を想像するか、プレーヤーとしての役割をどのように想像できるかが、災害対策本部訓練の充実度を左右するのです。

そのためには、災害規模、被害想定などのイメージをコントローラーも含めた参加者で共有し、どれだけ適切かつ的確に行動できるかが目標値であると決めておくと良いでしょう。

訓練によって認識した課題に対してのディスカッション

災害対策本部訓練の場合、災害発生直後のフェーズの約2~4時間程度の訓練となります。

この数時間で、災害対策本部の立ち上げから運営の訓練、情報共有訓練を実施するわけです。シナリオに基づいて設定された条件で訓練を開始し、各プレーヤーはコントローラーから条件を付与され、課題を与えられ、対応していかなければなりません。また、設定された目標値を達成するべく、各プレーヤーは意識を持って取り組むことも必要です。つまり課題のクリアなどの対応に追われて、あっという間に終わってしまいます。

すなわち、目標値として設定すべき3つ目のチェックポイントは、訓練後にどれだけ濃い内容のディスカッションができるかということです。

・与えられた課題に対して達成できたか
・どのようなことを考えたか
・異なる条件設定ではどうだったか
・実際の災害を踏まえるとどうか

時間に追われた訓練が終了してすぐ解散するのではなく、上記のようなことについて、訓練後にディスカッションすることが今後の訓練や災害時に役立ちます。

 

災害対策本部訓練では情報の収集・伝達・共有の3つがポイント

災害対策本部訓練では、情報をどのように扱うかがポイントとなります。

・どうしたら情報が集まるのか、情報をどう受け取るのか
・どんな情報が届くのか、どんな情報が有用なのか
・どんな手段で情報が届くのか、発信できるのか
・どのようにして周囲の状況を把握するのか

さまざまな状況が考えられる災害発生時には、情報についてこのような課題が山積します。そこで上手く活用したいツールがIP無線機です。IP無線機にどのようなメリットや使い勝手の良さがあるのか、情報収集や情報扱い方などの課題とともにみていきましょう。

限られた状況での情報収集の難しさ

災害対策本部訓練では情報収集の難しさを実感する場面が多くあります。情報を集めたいけどどうしたら情報が集まるのか、発信されているかもしれない情報をどう受け取るのかなど日常では想像しないような課題に直面することでしょう。

・インターネットはこちらが欲しい情報を検索するツール
・ラジオはさまざまな情報が知ることができるが一方通行で受け取るツール

このように日常では便利なツールも、災害対策本部の情報収集ツールとしては不向きだといえます。必要な情報を送受信できるツールが災害対策本部には必要だからです。その点、普段あまり使われない無線が災害時にはとても役に立ちます。

収集された情報の取捨選択判断

収集された情報を整理し、適切に対応することも災害対策本部の重要な役割です。災害対策本部訓練では、ほとんどの場合で必要な情報のみが届き、課題のクリアに向け対応するシナリオが設定されています。

しかしながら実際の災害対策本部には、どのような情報が届くのか、どの情報が有用なのか想像がつきません。また無線機を設置していても、単チャンネル設定の無線機では、必要な情報、重要な情報を収集できていないことも想定されます。このような状況での災害対策本部運営は困難を極めることでしょう。

つまり、災害対策本部訓練では収集された情報に対して判断し対応する部分を重要視されがちですが、実際は「情報収集すること」、「判断された対応を伝達すること」がとても難しいと認識しておかなければなりません。

内外と情報共有するための手段と手法

災害対策本部訓練を経験したからこそ感じる「情報の収集・伝達・共有の難しさ」に対して、どのような手段が有効なのかを検討し、災害発生時に対応できるように準備しておくことが重要です。

そこでおすすめなのが「IP無線機」です。IP無線機は、スマートフォンのようにNTTドコモやau、ソフトバンクなど携帯キャリアのパケット通信網を利用しているため、一般的な無線機のように物理的距離や構造物によって送受信環境が左右されにくいのが特徴になります。またスマートフォンとは違い、無線機のような一斉通話やグループ通話などが可能です。そのため災害時使い勝手の良いツールであり、情報の収集・伝達・共有にとても有効な手段といえるでしょう。

さらにIP無線機は、パケット通信網を利用しているため、無線機に必要な免許取得やアンテナの設置も必要もありません。手間が少なく、導入コストも低く抑えられることがIP無線機のメリットであると言えます。

災害時のIP無線機活用については別の記事で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。<IP無線機は災害時の通信手段に最適!メリット・デメリットとおすすめ機器の紹介

 

災害対策本部には扱いやすい情報共有ツールの確保が大切

災害対策本部訓練では、災害発生直後にスムーズに災害対策本部を立ち上げ、指揮命令系統を確立することが最大の目的です。しかしながら、指揮命令系統を機能させるためには、多くの情報を集約し、対応について発信できるシステムが欠かせません。つまり、災害時に扱いやすい情報共有ツールをしっかりと選定しておくことが必要です。

災害対策本部訓練などの初動訓練にて、積極的に課題を洗い出し、IP無線機などの情報共有ツールを選定・設置といった課題に対応し、フェーズ0~1段階(フェーズについてはこちらで詳しく解説されています)の訓練を繰り返し実施して、情報共有ツールを上手く活用できるようにしておくことが求められています。